馬鹿みてぇに笑うアイツを見上げながら、俺はアイツに口付けられた部分を軽く摩った。

素直になれない自分が嫌。

俺だって、田口のコトが…
なんて、俺が言ったら、アイツはどんな顔をするんだろう…。

もう怖くはないハズなのに、口には出せない。

「聖」

「…何?」

「好きって言って…?」

「ハァ?」

「嘘でも構わないから…お願い」

そんな縋るような声で言われても、さ…
言えるワケないじゃん?
例え冗談混じりの「好き」を伝えたとしても
俺自身が伝えたいのは
本気で言う「好き」なんだから…。

「嘘でも良い」なんて、言うなよ…

俺の本心を伝えられないのに
嘘でなんか、言えるワケねぇし。

たった2文字の言葉なのに、言葉に出すことが出来ない。

もどかしさと、苦しさが、渦を巻いて…どうにかなっちまいそう…。



認めたくなんかないけど…

俺は、アイツが好きなんだよ…

誰がどんなに否定したとしても
きっと、変わるコトはないから。



「田口、俺…」

終わりのない想いだったとしても

「俺、お前のコト…っ」

嘘なんて、吐けないから。

「っ…」



君が、好きです。



無意識に、涙が頬を伝ってきて
息が、苦しくなった。

声も、身体も、震えて。

「たぐっ…」

「聖…もう、良いから…」

優しく背中を摩ってくれる掌が、心地良い。

「ごめんね…変なコト言って…」

アイツは困ったように笑って、そっと抱き寄せられた。

「違っ…俺は…!」

俺は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、首を小さく横に振った。「俺は…本気で…っ」

何かが邪魔して、言葉が詰まる。

このままじゃ、このままじゃ…

誤解されたままで、終わっちまう…。

なのに、どうして言葉が詰まっちまうんだよ…。

こんなにも好きで、可笑しくなっちまいそうなのに…

早く、楽にさせて…。



好きだよ…



言葉が伝わらないのなら、俺は…



「こう…き…?」

気付いたときには
俺は自らアイツに口付けていて。

「っ…ん…」

ゆっくりとアイツの首に腕を回して、縋り付く。
自分でも何やってんのか解んねぇけど…
でも、好きってコトを伝えたくて。



ゴメンな、馬鹿で…。



「…ありがとう…聖」

そう言って微笑んで
今度はアイツが、俺に口付けてくれた。

ゴメンな、そうやって俺にキスしてくれたって、煙草の苦味しか残らなくて。

「大好きだよ…」

微笑んでくれるのが、愛しくて
俺もつられて、微笑んでいた。

いつもは酷ぇコト言って、誤魔化しちまうけど…
たまには、さ…

素直になったって、良いだろ?

可愛いコト言ってやれなくて、ゴメン。

それでも、お前を好きな気持ちは、誰にも負けねぇつもりだから。

「好きだ」なんて、口には出せねぇけど
お前なら、きっと気付いてくれるよな…?

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