言葉とか、形に表すのは下手クソだし
何に対してだって、不器用だけど

そんな俺でも、好きでいてくれるのなら…
俺は、このままでも良いのかな…なんて、思ったりして。

かなりの時間がかかっちまうかもしれねぇけど…
きっと、きっといつかは、アイツの前でも素直になれるかも…なんて。

アイツが素直な俺を求めるのなら、俺は…
例え求めていなくても、変わるかもしれねぇけど。

「聖…」

「ンだよ…」

「ありがと」

そうやってまた微笑むから…

だから何されたって、憎めねぇんだよ…

そうだよ、俺はこの表情に弱いんだよ…

体温が、すごく温かくて
この腕が解かれたら、きっとこの温もりが恋しくなるんだろうな…。

いつだって、別々の場所にいても、俺の中のどこかではアイツを求めている。

認めたくはないけど…
もう、認めるしかないから。

本音を言ってしまえば

アイツを失うことが、何よりも怖い。

俺にとって、アイツは空気みたいな存在で
失うだなんて、考えられないコトだから。今、アイツを失ったら…

本当、生きて行けねぇよ…



だから、この温もりが消えてしまわないように、さ…

手が届く位置に居たなら
ちゃんと手を握って
二度と離さないように
俺に繋ぎ止めて
喜ばせるようなコトは出来ないかもしれないけど…

それでも良いのなら、俺はずっと離さないから。

この手を離したら、俺以外のトコに行っちまうかも…なんて、変な不安を持っちまって

ずっと側に居たい
側に置いて欲しい

「聖…」

アイツの声が
凄く心地良くて
温かくて
愛しくて
恋しくて

「俺の名前…呼んで?」

またあの微笑みを見せるから
俺はただそれが嬉しくて

その微笑みを俺だけに見せて欲しくて
だから、俺は…

「…名前…?」

「うん…だって何時も下の名前、呼んでくれないでしょ?」

「ソレは…仕方ねぇじゃん…みんなの前でなんかよ…」

俺がそう言えば、アイツは

「なら、俺の前だけでは…名前で呼んで?」

またアイツは謎めいたコトを言うから
俺は黙って、頷いた。

そうすれば、アイツはきっとまた微笑んでくれるから
そう思ったから…
ただ、アイツの笑顔が見たくて

「淳之介…」



そして気付けば、俺はアイツの腕の中に居て
ソコは凄く温かくて、心地良くて
何時の間にか、俺は眠りについていて

目が覚めた時には、アイツの部屋に居た。

「俺…眠っちまってた…?」

「うん、凄い可愛かったよ、聖の寝顔」

そう言われた瞬間、一気に顔が熱くなった。

「ばっ…見んなよ!」

「見るなって方が無理だって」

そう言いながらクスクスと笑って、アイツは俺の額に口付けた。

部屋中にはアイツの匂いがいっぱいで
ソレだけで俺は、心地良くて、身体中をアイツに包まれているような気がして。

「ね、聖…」

俺の名前を呼ぶと、アイツは俺の髪に鼻を埋めて、唇をゆっくりと耳元へ近づけてきた。

「今日…泊まってかない?」

そうやって微笑むから
断れるワケねぇじゃん…。

「今日は親もいないから…さ?」

…一々ンなコト言うなっつーの…

お陰でさっきより顔が熱くなってきた気がするし…。

あー…本気で恥ずかしくなってきたし…。

俺は思わず俯いて、両頬に手をあてていた。

アイツはそんな俺を見て、また可愛いとか言うモンだから…

本当、何時まで同じコトが続くんだろ…

もしかすると、あの煙草の煙みたいにすぐに消えちまうのかもしれねぇけど

ただ一時だけの温もりでも構わないから

ずっとアイツを求めていたいんだ。

だから、とりあえず今日はアイツの腕の中で眠りにつこう。



…end…

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