数年前に、キミと過ごした場所はもうなく、雪はただ降り続ける。

 

キミを思い出す程に、虚しさだけが込み上げ、雪は掌の上で溶けていった。

雪は雫となり、掌から零れ落ちる。

 

零れた雫は、キミのように、地へと消えていった。

 

 

 

 

 

コナ−−ユキ

 

 

 

 

 

キミと居たこの場所の跡で、私は独り、立ち尽くしている。

 

キミと見た、雪がまた降っている。

もう誰も見ない空になったキミへは届かないと解っていても

 

この場所にキミが大好きだった花を、置いて行く。

 

数年前の、雪の日。

 

キミはまだ、私の隣に居た。

 

それが、キミと見た最後の雪。

 

思い出す程に、また雪が掌の上で溶けて行く。

 

掌から零れた雫は、まるでキミが流した涙かのようだった。

 

また今日も、この場所に花を置いて行く。

 

…届かないと、解っていても。

 

 

 

もう一度、キミの微笑みが見たい。

 

だからそう、泣かないでいて。

 

キミが居たこの地から、ずっと空を見ているよ。

 

 

 

今日は、一輪だけじゃないんだ。

 

もうこの場所から離れなければいけないから。

 

キミの大好きだったこの花を、キミの為だけに、幾つも持ってきたんだ。

 

あえて束にはしない。

 

両腕で抱える程の、花を一輪ずつ、キミの為に持ってきたんだ。

 

 

 

この花を、この場所に

キミの為に

 

 

 

置いて行こう。

 

 

 

窓辺で二人、雪を見つめていたことを思い出し、また掌の上で雪を溶かしながら

 

キミの表情を浮かべて、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

キミを瞼に焼き付けるのは、これで最後だ。

 

そう言い聞かせて、両腕は空を切った。

 

 

 

キミの感触は、もうこの場所にはない。

 

何処にも、見つからない。

 

 

 

辺りは音もなく、雪がただ降り続ける。

 

この場所に置いた花の上にも、雪が積もって行く。

 

もう一度だけ、キミの笑顔を瞼に焼き付けて…

 

 

 

涙が一滴、伝う。

 

現実とは見たくないモノだ。

 

残酷すぎる。

 

 

 

 

 

雪。

 

掌で、また溶け始める。

 

 

 

この場所に来ることは、もう二度とないだろう。

 

キミを忘れる為に

 

キミを忘れない為に

 

 

 

次にキミと逢えるのならば

 

その時は、この場所一面にキミの大好きな花を植えよう。

 

 

 

 

 


あとがき

 

シャア→ガルマです…一応(爆)

台詞全くないですね、はい。

俺の脳内可笑しいよ…珍しく原作添い…あふん。

お目汚しでした;;

 

2005.02.02 柊 藍司

 

 

 

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