俺は、何時も一人だった。
親も全く構ってくれないし、周りの人とも関わったことなんかなかった。
強いて言えば、俺の唯一の話し相手は『くまのぬいぐるみ』だけだった。
このくまは、俺がもっと小さかった頃に、名も知らない男の人に貰ったものだ。
ソレを俺は大切に今でも持っている。
くまは凄くフワフワしていて、心地良かった。
貰った時には俺よりも大きかったくまだけど、今では俺の方が少し大きくなっている。
今でも昔のように、ふわふわしたくまに凭れ掛かって、独りで寝る筈の俺は、くまと二人で寝ている。
くまは嫌がったりしないから、俺はくまが大好きだった。
くまは離れていくことはないのだから。
天使様の贈り物
そしてまた今日も、くまに凭れ掛かって眠る。
くまの感触は、凄く好き。
柔らかいくまは、俺を包み込むようにしてくれる。
だから俺は、すぐに眠りにつける。
俺は何時も同じ夢を見る。そう、くまをくれた男の人に出会った日のことを。
彼は、長身の細身で、ブロンドの髪をした白人の優男だった。彼のことはソレしか覚えていない。
だから、夢に出てくる時は何時も顔が影で隠れて見えなかった。
夢の中の俺は幼く、5歳くらいだった。
今と同じように、親は仕事に行き、帰ってくるのは夜中だった。
だから俺は何時も家の中で独りぼっちだったし、外に出るのも怖かった。
ずっと引き篭もりっきり。ベッドの中で身を屈めて、ずっと俯いていた。
ある日、何時もと同じくベッドの上で身を屈めていると、静寂な家の中に、チャイムの音が響き渡った。
俺はいきなりのことに身体が少しビクついた。
少し怖かったけど、恐る恐る部屋を出た。
まだ背の低かった俺は、玄関のドアに視線を送っても、ドアの向こうの客人の顔を覗き窓で見ることすら出来なかった。
だから俺は背伸びをして、ドアノブのフックに手を伸ばし、何処の誰がドアの向こうに居るのか解らないまま、扉を開いた。
するとソコには、俺なんかよりもずっと背の高い男が立っていた。
…そう、ソレが彼。
俺を見て彼は微笑み、身を屈めて俺の身長に合わせ、俺の髪を撫でる。
『…君が…ですか…。可愛い顔をしてますねぇ…』
そう言ってまた、俺に微笑みかける。
俺がきょとんとしていると、彼はこのくまを俺に見せた。
『コレ…君の為に買ってきたんですヨ…』
俺の頬を撫で、問いかけるように彼は囁く。
『ちょっと上がっても構いませんかネ?』
彼の問いに返答するように、俺は小さく数回頷いた。
すると彼はくまを担いで、俺に小さく頭を下げてから家の中に足を踏み入れた。
『君の部屋は?』
彼は辺りを見回し、再び俺に問う。
俺は部屋のドアに指を差し、彼を黙ったまま見つめた。
そうすると彼は、”ありがとう”と言うように微笑み、俺の部屋へ足を進めた。
ベッドの上にくまを下ろし、俺のほうを見てまた微笑む。
『ねぇ…コレ、貰っていいの…?』
心臓が大きい音でなっている。
人に何かを貰ったかとがなかったから、不安だった反面、嬉しかった。
それに、こんなに大きなくまのぬいぐるみを。
『ん…君の為に買ってきたんですしね…いわばプレゼントってヤツですかね?』
微笑み、彼は俺の頬を優しく撫で、用が済んだのかすぐに家を出て行った。
だから、名前すらも聞くことが出来なかった。今更後悔している。
夢は、もうそこで何時も終わってしまう。
何時も俺は続きを追い求めたがる。
でも、他人とは接したくはない本心もある。
外に出て、彼を探すことすら出来ないから、ずっとここで待ってるしかなかった。
あとがき
小説初打ち込み(笑)
ぁーもうダメダメです。
シャニ(アズ)の過去提造しようとして大失敗な気分;
一応続編なんで、良ければ今後も見ていただければ…
つっても、更新激遅いでしょうが;;
お目汚し失礼します;;
2004.09.27 柊 藍司