数日前、戦争は終わった。

大きな爪痕と小さな歓喜を残して。

 

そして僕にも、爪痕は突き刺さった。

 

彼という、大きな損失を残して。

 

 

 

 

 

ネクロフィリア

 

 

 

 

 

僕の目の前に現れた君の姿は哀れで、二つに裂けたのであろう肉体が、医務用の糸で繋がれていた。

痛々しい姿とは裏腹に、彼は安らかに眠っていた。

 

身体中の血は綺麗に拭き取られ、元から白かった肌が、更に青白く見えた。

 

彼の身体に触れるととても冷たく、また、目を覚ますこともなかった。

 

 

 

僕は医師に了承を得、彼の身体を自らの部屋まで運んだ。

 

 

 

彼に僕は問いかける。

何度も、何度も。

 

けれど、返ってくるのは虚しい静寂だけだった。

 

 

 

『…声を聞かせてくださいよ…聞こえているんでしょう…?』

 

返事が返ってくることはない。

 

『聞こえているんでしょう…?巫山戯ないでくださいよ』

 

何度も僕は彼の身体を揺さぶった。

けれど、彼の身体はだらしなく動かないままで。

 

頬を撫でても、反応一つもしない。

髪を撫でても、唇に触れても。

 

冷たい身体は、ただ横たわることしかない。

息をしている様子さえもしない。

彼の抜け殻だけが、そこに横たわっている。

 

僕の問いかけはただ虚しく、静寂に打ち消される。

 

彼の温かい肌を、触れることは出来ないのだと、思いたくはなかった。

 

けど、僕の願いはただ虚しくて。

 

 

 

彼の手を握ると、彼の腕はだらしなくぶら下がり、冷たい感触が、骨まで染み入るような気がした。

 

 

 

『オルガ…』

 

 

 

『早く…起きてくださいよ…』

 

 

 

『巫山戯ないでくださいよ…気付いているのでしょう?…起きてくださいよ…』

 

 

 

揺さぶった身体は、反応は未だにしない。

 

僕は彼の身体を、きつく抱きしめる。

彼の身体は、だらしなくぶら下がったままで。

 

『ねぇ…オルガ…僕を置いていかないでくださいよ…』

 

 

 

彼の首筋に触れ、僕の痕を探す。

首筋の、朱い部分に触れる。

 

『君は…僕だけのモノなのですから…』

 

 

 

僕は、首筋の朱い痕に、そっと歯を立てる。

硬く、柔らかな彼の首筋は、何時になく美しく映った。

天井から射す照明の光が、彼の頬で反射していた。

 

 

 

『僕だけの…っ』

 

 

 

僕の頬に、ゆっくりと冷たい、また温かい雫が伝っていった。

 

ただ僕の胸の奥が、締め付けられるような感じがして。

 

 

 

切なさと虚しさだけが、空間を駆け巡る。

 

彼から返事が返ってくることはない。

彼からは呼吸も、心拍も、聞こえない。

身体は冷たく、身動き一つもしない。

 

 

 

嫌な静寂。

 

 

 

 

 

僕は君に、最期の口付けをした。

 

 

 

 

 


死体愛です…趣味バレバレ(死)

こんな僕を置いていかないで…(何)

因みに、この小説の裏みたいなのも近日アプする予定です…勿論エロで(死んで)

まぁ裏ページ作ったりはしませんがね(ぇ)

お目汚しでした〜

2004.11.17 柊 藍司

[PR]動画