お互いには恋人が居て

それを理解しているのに

何時の日か惹かれあっていて

気付けば、求め合う可もなく、不可もない関係へと堕ちていった…



最初はほんの遊び心。
ちょっとした対向意識で。



『ふーん…お前は俺よりテクが上だと思ってんだ?』

『当たり前だろ?俺を誰だと思ってんだよ…』

何時も通り、他愛もない話。

恋人自慢、日頃の惚気話…他にも、他人が聞いて呆れるような話の数々。

今は性交時のテクニックがどうとか、他から聞けば馬鹿らしい話だけど。

恋人自慢、惚気話と始まって…結果的に最後に来たのがこの話。

基はといえば、俺が持ち出したんだけど。

『俺ってさ、結構キステクあると思うんだけど…どう思う?』

得意げにクスクスと笑い、隼人に問い掛けてみる。

『さぁな…ツッチーとキスしたことねぇし?…ま、俺よりは下だろうけど』

俺が得意げに言えば、コイツも対向してくるのは何時ものことだ。

『ふーん…じゃ、試してみっか?』

冗談混じりに俺が言うと、隼人もその冗談に乗ろうとする。
これも何時も通り。

『後悔してもしらねぇぞ…?』

ぐい、と顔をミリ単位で近付ける。唇に息が触れるような距離。

キスの一つくらいなんてことない。
そう思って、隼人の身体を壁際に押し付ける。

『ツッチー…此処で止めたら根性なしな?』

楽しげに笑いながら、隼人が挑発的に言う。

『お前こそ、良い度胸じゃん…後悔はなしな?』

そう言って俺は不適に笑み、ゆっくりと隼人の唇へとソレを重ねた。

愛しい恋人…タケにする時のように、隼人の口内へと舌を滑り込ませる。

此処までは予想通り。

そのまま舌をねっとりと絡め、互いにその舌を絡め合う。

此処も予想通り。

けどこの先が問題。このまま口内を荒らし回って俺の勝ち…と行きたいところだったのに…

急に俺の口内に侵入してくる隼人の舌。

歯列をなぞり、上顎を伝って舐めてくる。
この俺でさえ、ぞくりとする感覚。

思っていたよりも、コイツは巧くて
その上、俺よりもずっと…

息苦しさ、と言うよりは、コイツのぞくりとする感覚に、思わず身体が震えていて…

気付けば、隼人の舌から逃れようと、身体を離していた。

『なんだ…ツッチーもう降参…?』

クスクスと楽しげに笑う、声。
最大の屈辱。

『少し苦しくなっただけだ…ッ』手の甲で二人分の唾液を拭い取り、普段より荒くなった呼吸をゆっくりと調えていく。



…最悪だ。



自分でも解るくらい、頬が熱い。
きっと今俺は、情けない表情をしているのだろう。

その姿を、よりによってコイツに見られている。

『もしかして、俺とキスしただけで興奮しちゃったワケ?』

何時もの調子でケラケラと笑い、じっと目を見つめられる。



コイツの瞳は、何処か狂っているようにも映る。

何故かこの視線はエロく感じて…見つめられれば、男の俺でさえ背筋がぞくりとする。何時ものように、この狂った瞳に見つめられる竜は、ひとたまりもないんだと思う。

アノ瞳だけで、腰が砕けてしまいそうなのに。



そんな瞳に至近距離で見つめられて
挑発的な言葉を浴びせられて…
俺にどうしろって言うんだよ…

自分から挑発しておいて…心底情けねぇと思う。

それと同時に、このままで負けてはいられないと考える自分も居て。

『さぁ…?なんなら今度はお前を興奮させてやるし…』

挑発的に笑み、隼人に再び霓り寄る。お返しと言わんばかりに、隼人の耳朶に舌を這わせながら、隼人自身へゆっくりと触れ、ねっとりと撫でてやる。

『っん…』

俺のその行動にコイツも少し身体を跳ねさせる。

…けど。

ソレに対向するように、俺の首筋を甘噛みしてきて。

それだけで済むなら、まだ良い。

そのまま腰を撫でて来たと思うと、ズボン越しに窪みへと指先を這わせてくる。

『ぁ…ッ』

思わず身体がビクつき、何時も出さないような声を漏らしてしまった。

『ココ…感じるんだ…?』意地悪く笑う隼人に離させようと抵抗するが、力の抜けた身体では意味もなく、軽く跳ね返されてしまう。

慣れたように片手でシャツのボタンを開けていく隼人の指先は、凄く綺麗で
それでいて、凄くヤラシくて。

『隼人…どこまでやるつもりだよ…っ』

何故か、声が震えた。
でも、ソレに気付きたくなかったから、無理に強がっているように言った。

『どこまでって…行き着くトコまでに決まってんじゃん?』

相変わらず意地悪い笑いを上げる隼人の声が、遠退くような感覚がした。

 

 

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